メカニックのための自習室

海岸地域での保管における排気系ステンレス材料の腐食再現とその予測

【なぜこの実験をするのか?】

自動車の排気系部品は、使用過程において高温と外的腐食環境にさらされているので、耐食性に優れたステンレス鋼が多用されていますが、Cr(クロム)をはじめとする耐食性向上添加元素が少ないと機能上は問題なくても表面に腐食生成物が堆積し美観を損ないます。
自動車の流通において、船便は主要な輸送手段で、一度に多くの車両を運搬できますが、腐食環境である海岸地域での一時的な保管は避けられません。
海岸地域でのステンレス鋼の耐食性はこれまでも報告があるようですが、自動車排気管に固有な環境、特に車高や排気熱を加味して数字的に分析するような論議をされた文献はありませんでした。

 

今回の実験では、次のような目的で課題に取り組んでいます。
@海岸地域保管時の自動車排気系部品における斑状のステンレス腐食形態を再現させる。
これは、海岸地域での腐食を模擬する腐食試験を行いました。
腐食液にはNaCl(塩化ナトリウム)水溶液を使用し、SST(塩水噴霧試験)やCCT(複合サイクル試験)を想定しました。
しかし、自動車排気管用ステンレス鋼板を試験しましたが、長期間実施したにも関わらず腐食が再現されなかったようです。
そこで、今までの試験では行われていない、2つの要素である自走時にエンジンをかけることで短時間の熱と海塩粒子に含まれているNaCl成分以外に着目しました。

 

A自動車排気部品を模擬したステンレス試験片の大気暴露試験を行い、その腐食挙動・因子を明らかにする。
これは、腐食挙動をとらえるために腐食程度をRating Numberに置き換え傾向を捉えることで腐食因子の影響を調査します。腐食因子から、評価の推移を予測できれば、材料選定時に役立つと考えられます。

 

【実験方法】

試験に使用したのは、
【SUH409L】【SUS430LX】【SUS436L】【SUS304】【SUS444】
の5種類で行っています。
各材料を50mm×150mmに切断して使用しています。

大気暴露試験には、排気系マフラーを模擬して、外形50oのパイプを150mmに切断して使用しました。
試験材料の表面を、統一した条件にするために、傷を除去して1000番の耐水ペーパーで研磨した後に、アセトンで払拭しています。
前処理過熱は、自走時に排気系に加わる熱を計算して、300℃で30分(灼熱状態)としました。
使用される条件を考慮して、特別な不動態被膜処理はしていません。

 

腐食試験として、SST(海水噴霧試験)、CCT(低温・海水侵漬型の複合サイクル試験)、大気暴露試験を行っています。
SSTは<JIS Z2371>という規格の検査に従って行い、CCTは<JIS H 8502>という中性塩水噴霧サイクル試験と同様ですが、塩水濃度を5%から0.5%に変更して行われました。

 

海水噴霧試験には、大気暴露試験が行われる周辺の実際の海水を1日3回程度、試験材料に噴霧させた後、常温湿度で乾燥させることを繰り返し行いました。

試験材料の置き方は、画像のような装置に置いて、1回あたりの海水付着量は140mg程度としています。
比較するために、【SUH409L】【SUS430LX】【SUS436L】を、前処理加熱をしない状態で海水噴霧を同時に実施しています。
大気暴露試験は、日本国内本州の某海岸から100〜200m付近で行っていて、季節の変化による差も確認するために、春期(4〜7月)夏期(7〜10月)秋・冬期(10〜1月)のそれぞれ90日間、合計3回の試験をしました。
自動車の排気系の構造を模擬して、地上高から225mmの位置に設置した屋根付きの暴露台を使用しました。

 

【実験結果】

腐食形態を再現する試験は、画像の様になりました。

 

ということで、この結果に興味がある方は=>こちらからどうぞ


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