【クライスラー・ジープ・ダッジのエンジン制御の基本】for mechanic & freaks
【クライスラー・ジープ・ダッジのエンジン制御の基本】
【クライスラー・ジープ・ダッジのエンジン制御の基本】では
・PCMの役割
・PCMの電源回路とアース回路の種類と役割
・PCMへの入力と役割、故障診断に役立つ知識
・PCMからの出力と役割、故障診断に役立つ知識
・ETC/APPS システムの作動
を解説していきます。
【PCM】=パワー・コントロール・モジュール
【ETC】=エレクトリック・スロットル・コントロール
【APPS】=アクセル・ペダル・ポジション・センサー
ステップ 1【電気系統の基本原理と基本電気系統】
電気系統の基本原理に対する知識は、【PCM回路】のオペレーションを理解するために必要不可欠です。
これを理解しておくと、電気に関係する故障診断も理解できます。
ぜひここで身に着けてください。
これから、いくつかの概念について復習していきます。
以下に示されている回路は、バッテリに接続されている単純な直列回路です。
図のように、スイッチが開き、電流が流れていない状態です。
バルブが装着されていますが、点灯はしていません。
電流が流れていないときには電位差が発生しないので、バルブのアース側(2番)の電圧は12Vになります。
イラストは、開いている直列回路です。
スイッチが閉じると、電流が流れます。
このときバルブのアース側(2番)電圧は0Vとなり、バルブが点灯します。
イラストは、閉じている直列回路です。
では、次にスイッチを可変抵抗器に交換した状態で見てみましょう。
可変抵抗器の抵抗が低いと、2番での電圧は0Vに近い状態で、バルブが明るく点灯します。
可変抵抗器の抵抗を増やすと、2番での電圧も増え、バルブが徐々に暗くなります。
イラストは、低オーム設定時のバリアブル・レジスタ(可変抵抗)です。
ここまで、理解できていますか。
これが理解できれば、あとは簡単です。
逆に、これが理解できないと、先に進んでも「さっぱりわからない」ということになります。
理解できるまで、じっくりと時間をかけてください。
【PCMの2ステート(2つの状態)インプット回路 】
これらのコンセプトをPCMの【2ステート・インプット回路】に当てはめてみましょう。
PCMには、12ボルトの基準電圧と内部プルアップ抵抗があります。
PCMセンサの基準電圧は、通常12ボルトまたは5ボルトです。
下図は、スイッチが開いている状態を示しています。
PCMの電圧計回路は、2番での電圧を見ています。
回路が開いているとき、PCMは高電圧であると判断します。
イラストは、ハイインプット時の PCM 回路です。
図は、【2ステート・インプット回路スイッチ】が閉じている状態を示しています。
この回路が閉じている状態のとき、PCMは0Vと判断しています。
イラストは、ロー・インプット時の PCM 回路です。
図は、PCMが【ECT(エンジン水温センサ)】をモニタしている状態を示しています。
このセンサは、【NCT(負の温度係数)】サーミスタです。
この図では、センサの基準電圧が5Vとして設定されていることを覚えておいてください。
【ECT】は、【NTC】センサなので、温度の上昇に伴ってセンサ抵抗が減少します。
センサ抵抗が減少すると、信号電圧も低下します。
このセンサは、【温度変化に伴って連続的に変化するアナログ信号】を供給します。
【PCMは不具合をどうやって認識するのか】
【PCM】は、【センサ電圧信号をモニタ】し、異常な状態が発生するとDTCをセットします。
【PCMが認識することができる不具合】は、次の3種類です。
・アース側へのショート
・オープン回路
・ポジティブ側(+側)へのショート
【DTC】とは、ダイアグノスティック・トラブル・コードをさします。
【アース(−)へのショート(短絡)しているとき】
下図は、【センサ回路がアースへショート】している状態を示しています。
このときの【PCMセンサ信号電圧は0V】で、【PCMがこの電圧を不具合として判断】します。
PCMは、「DTC P0117-ECT SENSOR CIRCUIT LOW」を保存し、MILランプを点灯させます。
【MIL】とは、マルチプル・インジケーター・ランプをさします。
イラストは、アースへショートした状態の PCM 回路です。
【オープン回路(断線)しているとき】
下図は、センサ回路が開いている(断線している)状態を示しています。
このときの【PCMセンサ信号電圧】は、【最大基準電圧である5V】で、PCMはこの電圧を不具合と判断します。
PCMは、「DTC P0118-ECT SENSOR CIRCUIT HIGH」を保存し、MILランプを点灯させます。
イラストは、オープン回路状態の PCM 回路 です。
【ポジティブ(+)へのショートしているとき】
図は、センサ回路の中で、【ポジティブ(+)へショート】している状態を示しています。
【PCMセンサ信号電圧は再び5ボルト】となり、PCMがこの電圧を不具合として認識します。
PCMは、「DTC P0118-ECT SENSOR CIRCUIT HIGH」を保存し、MILランプを点灯させます。
【オープン回路】または【ポジティブ(+)へのショート状態】とは、【同じDTCを発生する】ので注意してください。
イラストは、ポジティブ(+)へのショートしている状態です。
【PCMのオペレーション】
【PCM】は、以下にある燃料関連システムのオペレーションをコントロールします。
・燃料供給
・エミッション・コントロール
・充電電圧
・アイドル・スピード
・エア・コンディショニングのコンプレッサ
・スピード・コントロール・システム(装備されていれば)
【PCM】は、【インプット・センサ、スイッチ】【個別の作動状況をモニタするデータ・バスから送信される情報】を受信しています。
【PCM】は、エンジン性能を制御するアウトプットを機能させるために、この情報を処理します。
アウトプットには、次の内容があります。
・イグニッション・システム
・フューエル・インジェクタ
・ジェネレータ・フィールド (これはクライスラー・ジープ・ダッジ特有のものです)
・エア・コンディショニング・コンプレッサ
・ラジエータ・ファン
・スピード・コントロール・サーボ(装備されていれば)
【次世代コントローラ(NGC)の PCM】
次世代コントローラ(NGC)は、最終的に全ての【SBEC】と【JTEC PCM】【EATX III】と【EATX IV】【トランスミッション・コントロール・モジュール(TCM)】と置き換えられ、その後継型となるPCMです。
この【NGC PCM】は、最初に2002年モデルのLH(300M)へ採用され、追って2002年後期モデルの4.7Lエンジン搭載DN(デュランゴ)車両に搭載されました。
【NGCコントローラの特徴】
・【PCM】と【TCM】の結合によって、エンジン・ルーム内の取付スペースがかさばらない
・【PCM】と【TCM】が一体になり、外部配線回路の数が減少
・新しい燃料噴射量計算式により、高燃費、安定したアイドリングを実現
・RFI(ラジオ周波インタフェース)とEMI(電磁誘導)に対する抵抗力を改善
・スマート・ドライバの採用と強化された診断能力を通じて、不具合検出と回路防御が改善
・以前のPCMと比較して、処理スピードが向上
イラストは、5.7L NGCの PCMです。
【NGC3型とNGC4型の相違点】
【NGC3型コントローラ】は、エンジン用マイクロプロセッサとトランスミッション用マイクロプロセッサが内部の【Dual-Port RAM】チップを通してコミュニケーションをとります。
高速デジタル信号で直接通信を行い、情報を共有化することが可能です。
2007年に登場した【NGC4型コントローラ】は、エンジンとトランスミッションを一つのマイクロプロセッサ(シングルプロセッサ)でコントロールします。
【NGC PCM】には、【4個の38ピンコネクタ】が使用されています。
個々のコネクタは、以下にある色の違いで識別することができます。
C1は、黒。
C2は、オレンジ 。
C3は、白。
C4は、緑ですが、(クライスラー製以外のAT搭載車両は使用しません)
【SBECのPCM】
【SBEC】(シングル・ボード・エンジン・コントローラ)は、センサと他のインプットから送信される情報を処理するロジック・モジュールと、全てのアウトプット装置を作動させるパワー・モジュールとを1つのプリント基板に合体させた最初のコントローラでした。
【SBEC 3】(シングル・ボード・エンジン・コントローラ 3)は、1995年に導入されました。
【SBEC 3】には、【RFI(ラジオ周波インタフェース)】と【EMI(電磁気インタフェース)】を保護する【シールド・ケース】があります。
【SBEC 3】は、コントローラ本体を冷却するためのエア・フローを必要としません。
画像は、SBEC の PCM です。
【SBEC T】と【SBEC U】PCMには、1個の60ピン・コネクタがありましたが【SBEC V PCM】では、【2個の40ピン・コネクタ】に設計変更されました。
【JTECのPCM】
【JTEC(ジープ・トラック・エンジン・コントローラ)】は、ジープ車両、ダッジ・トラック車両、バイパー用PCMとして1996年に導入されました。
イラストは、JTEC の PCMです。
【JTEC PCM】には、【3個の32ピン・コネクタ】があります。
ターミナルは金メッキが施され、簡単に差し込める設計になっています。
このあと、ステップ2〜5と続きます。
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